美殿町商店街の通り沿いにある、レンガ造りのビル。クリエイターらが事務所やアトリエを構えるシェアオフィス「まちでつくるビル」です。このビルが動き出したのは、2013年4月29日。今日もまた、岐阜の未来を担う「つくる人々」が、ビルの中で様々な制作活動を繰り広げています。
まちでつくるビルのオーナーは、安田屋家具店のオーナー・鷲見浩一さん。鷲見オーナーは、美殿町商店街振興組合の理事長も務めています。
築50年を数えるこのビルは、安田屋家具店の婚礼家具専門のショールームとして使われていました。ショールームをたたんでからは、オーナー家族が住まう5階を除き、1階から4階までが空き店舗。空いているフロアは、イベントスペースなどに活用していました。しかし、イベント当日の集客はあるものの、その後に入居者の希望があるなどの効果はなく、普段は商店街の荷物置き場と化していたのです。

そんな中、岐阜市の中心市街地整備推進機構である「一般財団法人 岐阜市にぎわいまち公社」の支援のもと、商店街に新規創業が生まれる環境をつくるための取り組みが始まりました。物件の活用に快く賛同した鷲見オーナーを交えて話し合いを重ねた結果、ビルを小割りして、創業希望者らの事務所や店舗として入居者を募る「シェアオフィスビル」の立案へと進んだのです。
2013年2月に入居者募集が始まってからは、20〜40代の事業主らの応募が相次ぎました。オープンの4月末に向けて、内部の解体やペンキ塗りなどを入居者らで行うなど、ビルのリノベーションは着々と進みました。
そうして迎えた4月29日。オープニングパーティーには多くの人が集い、できたての「まちでつくるビル」を見学しました。この日、美殿町に新たな歴史がひとつ刻まれたのです。

本格始動の5月には2〜4階のアトリエ・オフィスが埋まった「まちでつくるビル」。入居者が集うミーティングを月1回開催し、自分たちのオフィスをさらに充実させるために知恵を出し合っています。さらに同年11月には、新たなまちのイベント「つくる市」を、商店街振興組合とともに手を取り合って開催。同時に1階にカフェ「mirai」がプレオープンし、年末にはすべてのフロアに入居者が入り、満室の状態になりました。
「まちでつくるビル」内で、仕事に使う資料や道具を共有する「シェア」も日常茶飯事に。モノや情報だけでなく、仕事を依頼し合ったり、共同で制作活動をしたりと、ソフト面での「シェア」もさかんに行われるようになりました。
現に、美殿町商店街のガイドブック「MITONO」や、このホームページは、ビルの入居者らが協力して制作したもの。こうした動きが、まちにも少しずつ化学反応を起こしているのです。

現在、商店街の商店主をはじめ、有志で集まって結成した「まちづくり委員会」の活動も行われ、ビルの入居者も積極的に参加しています。美殿町の不動産情報を共有して活用する術や、イベント「つくる市」について話し合ったりと、現在進行形の議論が重ねられています。それをきっかけに、少しずつ街が動き出しています。
「いえでつくる」から「まちでつくる」へ。
そうして集まってきたメンバーが、時間が経過した今、すっかり美殿町の一員としてまちづくりに参画しています。きっとこれから、「つくる人」にとっての憧れの場となり、関わる人や見守る人たちによって、どんどんと進化を遂げていくのでしょう。